労務管理その他の労働に関する一般常識




 A・B・D・Eは、労働者派遣法、Cは職業安定法からの出題です。
 正直、5点すべて正答できる問題でした。
 この中で、Dのみ「雇用関係」と「支配関係」で悩まれた方がいらっしゃったのではないかと思いま
 すが、労働者派遣の場合は、「雇用関係」が正しい肢です。「支配関係」は労働者供給となります。
 従って、少なくともA・B・C・Eは正答してほしいところです。



 今年はすべての問題が白書からの出題でした。昨年より一層白書の重要性が高まった年になり、
 法律にかけていた受験生には辛い年になったと思います。社一が法律系の問題であったため、
 労一・社一の合計で、なんとか足切だけは免れたいところ。



 【問1】
 次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、この問において、「白書」とは「平成17年
      版労働経済白書」のことである。

 A.白書によれば、我が国が取り組むべき大きな課題として、人口減少と少子高齢化への対応が
   あるとし、また、2007年以降には、経済成長に大きく貢献してきた「団塊の世代」(1947〜49年
   生まれ)の多くが企業での引退過程を迎えることとなる、としている。

 B.白書によれば、労働力供給が制約される中で、企業は、より望ましい雇用管理を構築し、労働
   者の意欲と能力を十分に引き出していかなくてはならない、今まで企業は、従業員の年齢構成
   の高齢化に伴って、年功的な賃金構造を維持しようとすると多くの労務コストを必要としたが、
   2007年以降、団塊の世代が引退過程を迎えると、今までのコスト負担は低下し、むしろ余裕を
   生じさせることになり、現在の賃金構造を前提とすると、企業の労務コストは10年問の累計で
   約88兆円の剰余が生じる、と試算している。

 C.白書によれば、厚生労働省が(株)UFJ総合研究所に委託調査した「若年者のキャリア支援に
   関する実態調査」において正杜員を対象として行った調査項目をみると、「職業生活・キャリア
   形成に関する主な相談相手」では、「職場の上司・先輩」が50%、「職場の同僚」が37%、「学校時
   代の友達」が36%、「家族・親戚」が33%の順となっており、「職業生活を考える上でモデルになる
   人」では、「職場の上司・先輩」が58%、「家族・親戚」が18%の順となっている。このことから、職
   場において若年者のそれぞれのキャリアについての相談相手となり、労働者の持つ能力を最
   大限に発揮させる支援ができる人の存在が重要になろう、としている。

 D.白書によれば、内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」において、60歳代の
   人の理想の引退年齢について、65歳以上とした者の割合は、日本では8割以上を占めている
   のに対して、韓国、アメリカ、ドイツ、スウェーデンでは5割以下になっており、我が国の高齢者
   の理想引退年齢が高いのが特徴的である、としている。

 E.白書によれば、日本労働研究機構の「育児や介護と仕事の両立に関する調査」において、「仕
   事と育児を両立しやすくするために推進すべきと考える施策」をみると、女性の雇用者では「労
   働時間の短縮など、働きながら育児をしやすい柔軟な働き方の推進」が31%、次いで「保育所
   の整備」が21%の順になっており、男性の雇用者では「男性が育児に参加することへの職場や
   社会環境の整備」が37%、「労働時間の短縮など、働きながら育児をしやすい柔軟な働き方の
   推進」が22%の順となっており、こうしたことから、仕事と育児の両立については男性、女性の
   協力は当然のことながら、企業における働き方の見直しや両立支援の取組が求められている
   ことがわかる、としている。

 【解答・解説】

 A.○ 「ここが出る!平成18年度本試験直前対策」ズバリ的中!でした。
      団塊の世代の退職は大きなトレンドです。白書に限らず新聞でも大きく報道されています。
      白書対策では経済系の新聞をチェックしておくことは受験生の必須条件といえます。(社労
      士試験で経済系の新聞チェックは当たり前ですよ!)
      「ここが出る!」では、この問題について言及しています。読んだ方、良かったですね!

 B.○ 前段は正しいと分かっても、後段の「10年問の累計で約88兆円」は知っていないと正答し
      づらい問題です。ただ、社労士試験の場合は、こういった選択肢は、「誤っているものはど
      れか」と問われた場合、正答であることが多いんです。傾向はきちんと掴んでおきましょう。

 C.○ これも知っていないと答えられない問題です。ただし、文脈から判断して、なんとなく正答
      と思われるので、ここを誤まりの選択肢とした受験生は少ないのではないでしょうか。

 D.× 「一般非常識対策」で解説したとおり、これが明らかな誤りの選択肢。

 E.○ これもCと同様に知っていないと答えられない問題ですが、文脈からある程度正答である
      と判断できる問題といえます。新聞はきちんと読んでおきましょう。