職域保険と地域保険
 【主要な保険制度】
 @ 労働者災害補償保険法 → 労働者災害補償保険
 A 雇用保険法 → 雇用保険
 B 健康保険法 → 医療保険
 C 国民年金法 → 年金保険
 D 厚生年金保険法 → 年金保険
 E 国民健康保険法 → 医療保険

 @、A、B、Dを「職域保険」ということがあります。
 職域保険というのは、事業所単位で適用されるもので、要件に該当すれば、事業主の保険加入
 の意思にかかわらず、加入が強制されるものです。
 これに対し、CとEは、自分が住んでいるところ(住所)を基準に個人単位で加入することから
 「地域保険」と呼ばれます。


 両者は、保険給付の違いもさることながら、保険料を、誰が、どの程度負担するかが大きく異な
 ります。
 職域保険の場合は、労働者災害補償保険(略して「労災保険」と言います。)を除いて、原則とし
 て、事業主と被保険者が半額ずつ負担することになっているので被保険者本人の負担は保険料
 全体の約半分となります。
 一方、地域保険の保険料は、本人が全額負担することになります。なお、労災保険は、事業主が
 全額負担します。

 積立方式と賦課方式
 保険の財政方式は、試験では、社会保険に関する一般常識(略して、社一といいます)という科目
 で扱う内容です。
 財政方式と言っても、ピンとこないかもしれませんが、簡単に言うと、保険給付に必要なお金をど
 うやって準備するかということです。
 財政方式には大きく2つあって、「積立方式」と「賦課方式」があります。

 まず、積立方式ですが、これは将来の保険給付に必要な原資を、あらかじめ保険料で積み立て
 ていく財政方式のことで、メリットは高齢化が進んでも保険料に影響を与えないということ、逆に、
 デメリットとしては、金利変動の影響を受けやすいといった点です。
 金利変動の影響を受けやすいというのは、将来のある時点(例えば、20年後)の保険給付に必
 要なお金が20億円と予測されるとき、今から、20年後を見据えて、保険料を積立てていくわけで
 すが、運用しながら20億円を作っていくので、単純に毎年1億円がいるわけではなく、運用利回
 り分を割り引くことになります。(でないと、毎年の保険料が高くなってしまいます。)

 運用利回りを3%と想定していたところ、実際には、2%しかなかったのであれば、20億円に届か
 ないし、4%で運用できたのであれば20億円を超える積立を確保できることになります。
 実際の運用は、その時々の世の金利情勢に左右されるのが常で、金利が高ければ、それなりに
 高利回りが期待できるし、逆に低ければ、少々頑張っても、高い利回りで運用するのは難しくなり
 ます。
 デメリットの「金利変動の影響を受けやすい」というのはこういうことです。


 次に、賦課方式はというと、毎年、毎年、1年ごとに必要な保険給付の原資を、そのときの現役世
 代の保険料で賄うやり方で、メリットとデメリットは、積立方式と逆になります。
 つまり、金利の変動などの影響は受けにくいものの少子高齢化が進む社会では後世代の保険料
 負担が増大してしまい、巷でよく言われる「子や孫に負担を強いる」状況を作ることになってしまい
 ます。
 現在の年金制度は、賦課方式に主軸を置いており、部分的に積立方式が補完するものとなって
 います。
 
 
 短期給付と長期給付
 保険給付は、加入してすぐに給付を受けることができるか、長く加入し保険料を払わないと受け
 られないかにより、「短期給付」と「長期給付」に分けられます。
 短期給付の典型は、医療保険です。例えば、会社に就職し健康保険の被保険者になると、出社
 1日目から病院で健康保険を使って診療が受けられます。
 一方、長期給付の代表には、老齢の年金があります。これは原則として、10年以上の保険料の
 納付と、年齢が65歳になっていることが必要で、息の長い話になっています。

 
 
 現金給付と現物給付
 どのような形で保険給付を行うかの違いにより、「現金給付」と「現物給付」があります。
 年金については、早い話「年間でいくらお金を受け取る」というもので現金給付です。
 一方、風邪をひいて、近所の医者で診療を受ける(「療養の給付」といいます)のは現物給付です。
 帰りがけに、窓口で自己負担分のお金を払いますが、これは現物給付で受けたもの全体をお金
 に換算した3割です。(年齢や所得で変わりますが、一般的には3割になります。)

 
 
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