国民年金の被保険者(強制被保険者)

 ■ 第1号被保険者

 @ 日本国内に住所がある
 A 20歳以上60歳未満
 B 第2号被保険者でも第3号被保険者でもない
 C 60歳前から厚生年金や共済年金など老齢(退職)年金を受けることができない
 D いわゆる医療滞在ビザや観光・保養目的のロングステイビザで来日していない

 以上の5つ全部に当てはまると第1号被保険者です。
 具体的には、自営業者、学生、無職などが該当します。無職でも第1号被保険者になります。
 被保険者になるかどうかと保険料の納付義務の有無とは別次元の話なので混同しないで下さい。
 保険料免除者や納付猶予者であっても第1号被保険者は第1号被保険者です。

 ■ 第2号被保険者

 @ 厚生年金保険の被保険者
   原則として、日本国内に住所があるとか、20歳以上60歳未満だとかの年齢要件はありません。
   具体的には、サラリーマンや、OL、公務員、私立学校の教職員が該当します。

 ■ 第3号被保険者

 @ 第2号被保険者の配偶者
 A 主として第2号被保険者により生計を維持している者(「被扶養配偶者」という)
 B 20歳以上60歳未満の者

 被扶養配偶者とは、日本国内に住所を有するか、外国留学する学生や日本国内に住所が無くて
 も渡航目的などの事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者となっています。

 以上の3つ全部に当てはまると第3号被保険者になります。
 具体的には、サラリーマンの妻や、OLの夫、公務員の妻、公務員の夫です。
 原則として日本国内居住が要件です。
 テーマと直接関係ありませんが、重要なので「生計を維持している」の意味について、整理してお
 きましょう。

 【 3つの生計維持 】

@ 健康保険の被扶養者
   原則として、年間収入130万円未満
最も厳格な要件 
A 厚生年金の加給年金額などの支給要件
   原則として、年間収入850万円未満
やや緩和された要件 
B 労災保険の遺族補償年金などの支給要件
   年間収入は問わない
 
夫婦共稼ぎでも認められるほど緩やかな要件

 ここまでが、強制被保険者です。
 要件を満たせば、本人の意思と関係なく、法律上当然に被保険者となります。
 自営の人で「国民年金に入っていない。」という人がいますが、ちゃんと入っています。単に、保険
 料を滞納しているに過ぎません。
 第1号被保険者は、国民年金だけに加入します。第2号被保険者は、通常、厚生年金や共済年金
 にも加入します。年金制度を2階建てに見立てると、サラリーマンやOLは1階が国民年金の第2号
 被保険者、2階が厚生年金の被保険者となり、同時に2つの資格を持つことになります。
 将来の老齢の年金は、国民年金と厚生年金の二つの制度から支給されます。


 国民年金の被保険者(任意加入被保険者、特例任意加入被保険者)

 次に、任意加入被保険者を見ましょう。
 強制でないから任意なのですが、そもそも任意で加入する目的はなんでしょうか?

 将来、年とったらもらえる年金(国民年金では、老齢基礎年金)を受けるには、原則として、10年
 以上の加入期間が必要です。
 さらに満額(「フルペンション」ということがあります)を受給するには、40年間(20歳から60歳まで)
 保険料を納付していることが必要です。
 中には、加入期間が短すぎて、10年に足りない人や10年の受給資格期間はクリアーできても、
 加入期間が長くないために受給額が少なくなってしまう人がいます。
 あるいは外国で生活している人で、日本国内にいたら第1号被保険者となるような人が、将来は、
 帰国し、日本で老後の生活を送りたいと考えている人もいるでしょう。

 こうした人が、受給資格期間を満たし年金の受給権を持てるようにするため、あるいは年金額を
 増やすために任意加入します。
 一言でまとめると、
  @ 受給資格期間を満たすため
  A 年金額を増やすため
 の2つです。任意加入には、普通の任意加入と特例による任意加入があります。

 ■ 任意加入被保険者

 @ 日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の者で、老齢(退職)年金を受けることができるも
   の
 A 日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の者
 B 日本国籍があって、日本国内に住所がない者(海外生活者)であって20歳以上65歳未満の
   もの

 ※ @・Aについては、国民年金法の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令
   で定める者は除かれる。

 以上のうち、どれかに当てはまれば、厚生労働大臣に申出をして被保険者となることができま
 す。
 任意なので「被保険者となる」ではなく「被保険者となることができる」となっていることに注意して
 ください。また「厚生労働大臣に申出ること。」というのを忘れないようにしましょう。

 @ABのうち、わかりやすいのはB。
 今は、外国で生活しているものの老後は日本で送りたいが、生活するのに年金が欲しいと考えて
 いる人です。注意したいのは、国籍要件です。もし国籍を問わないとなれば、外国に住んでいる
 外国人が、老後は日本で過ごしたいからと日本の年金に入るということができてしまいます。

 次に、Aについて見ましょう。
 第1号被保険者は60歳になったら被保険者でなくなりますが、このときに、年金の受給資格であ
 る10年の加入期間がない人が10年以上にしようと60歳以降も加入します。また、10年をクリアー
 している人であっても年金額を増やすために加入する場合もあります。

 最後に@。
 新法に切り替わった当時(昭和61年4月)、例外的に60歳未満で老齢の年金を受給できる人が
 いました。具体的には、船員や炭鉱、鉱山などの坑内労働者だった人です。その人たちは、重
 労働のため引退が早かったため60歳未満でも年金受給権が発生します。
 第1号被保険者のところで見たように、60歳前から厚生年金や共済年金など老齢(退職)年金を
 受けることができれば第1号被保険者にはなれません。
 かといって、満額の老齢基礎年金は受給できない(40年に足りず)ので、65歳になるまでは任意
 加入して将来の年金を増やそうとするのです。

 ■ 特例任意加入被保険者

 強制被保険者以外で、昭和40年4月1日以前に生まれ、かつ、老齢(退職)年金の受給資格を得
 ていない者が、次のいずれかに該当すれば、厚生労働大臣に申出て被保険者となることがで
 きる。
 @ 日本国内に住んでいる65歳以上70歳未満の者(国民年金法の適用を除外すべき特別の理
   由がある者として厚生労働省令で定める者は除く。)
 A 日本国箱を持っており、日本国内に住所がない者(海外生活者)であって65歳以上70歳未満
   のもの

 強制被保険者が原則、任意加入被保険者は特例とすれば、この特例任意加入被保険者という
 のは、特例の特例と位置づけられます。
 65歳まで任意加入してもまだ、老齢(退職)年金の受給資格を得られないときの救済制度です。
 したがって、年金の受給資格を得ている人は加入できません。
 要は、年金額を増やすための加入は認められていないということです。なお、70歳になるまでに
 受給資格期間(10年)を満たし、老齢(退職)年金の受給権を得たときは、その時点で被保険者
 の資格を喪失します。
 まさに年金が受給できる最低基準をクリアーするためだけに設けられているのです。


 被保険者資格の得喪と種別変更
 取得と喪失を合わせて「得喪」といいます。
 大多数の人は、資格の取得と喪失は何度も起きません。おそらくは1〜2回でしょう。
 一方、種別変更は、強制被保険者の中での異動を指し、よく起きます。

 イメージを掴むために、具体例で考えましょう。特に断りのない限り日本人で日本国内での話で
 す。

 【 例 1 】
  大学生のときに20歳を迎え、22歳で民間企業に就職(厚生年金の被保険者)。
  30歳で退職し、公務員(厚生年金の被保険者)である配偶者の扶養となる。
  40歳のとき配偶者が退職し、自営となる。
  62歳で民間企業に再就職(厚生年金の被保険者)。
  65歳で退職。

  このケースでは、20歳(資格取得 第1号)、22歳(第1号→第2号 種別変更)、30歳(第2号→
  第3号 種別変更)、40歳(第3号→第1号 種別変更)、60歳(資格喪失)、62歳(資格取得 第
  2号)で65歳(資格喪失)となります。

 【 例 2 】
  高校卒業後19歳でアメリカに留学し、30歳で帰国(アメリカでは任意加入せず)、民間企業に
  就職(厚生年金の被保険者)。
  50歳で退職し、アメリカで事業を始める(このとき任意加入した)。
  60歳で帰国。

  このケースでは、30歳(資格取得 第2号)、50歳(資格喪失→任意加入被保険者として資格取
  得)。60歳(資格喪失)となります。

 【 例 3 】
  18歳で公務員(厚生年金の被保険者)となり、60歳で退職し、民間企業に再就職(厚生年金の
  被保険者)。
  65歳で退職。

  このケースでは、18歳(資格取得 第2号)、65歳(資格喪失)です。
  60歳のときの退職と再就職は、どちらも第2号なので種別変更は起きません。

 強制被保険者内の異動、つまり、第1号、第2号、第3号の枠内を行ったり来たりするのは、種別
 変更なので取喪は起きませんが、第1号、第2号、第3号の枠外へ飛び出すことがあれば、逆に
 枠外から第1号、第2号、第3号の枠内に入ってくれば、取喪が生じるということを理解しておいて
 ください。

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