厚生年金の保険給付 (老齢厚生年金)



 【 まず最初に 】
 ここから厚生年金に入ります。
 年金科目は、国民年金と厚生年金を一体のものとして捉えることが大切なので、国民年金で
 はどうだったかを意識して学習しましょう。
 厚生年金の学習上の特徴として、老齢の給付は、「60歳台前半の老齢厚生年金」と「老齢厚
 生年金」に分けるのが通例です。
 国民年金の主な給付は、「老齢、障害、遺族」。
 対して、厚生年金は、「(60歳台前半の)老齢、(何もつかない)老齢、障害、遺族」です。
 なお、表記についてですが、正確には「厚生年金保険」とすべきなのでしょうが、読むときに回
 りくどくなるので、「厚生年金」あるいは「厚年」としています。
 それから、厚生年金は「保険給付」、国民年金では、単に「給付」となっているのは、国年には、
 保険料を払わないで給付を受ける人(3号被保険者を思い浮かべてください)がいるからです。

 ■ 厚生年金の保険給付


@ 老齢厚生年金  年金
A 障害厚生年金
B 遺族厚生年金
C 障害手当金  一時金
D 脱退一時金
E 脱退手当金

 ■ 老齢厚生年金

 老齢基礎年金と同じ趣旨で、要は、老後の生活保障です。
 【 まず最初に 】 で、60歳台前半と普通の老齢厚生年金の両方は別物と考える方がいいと書き
 ましたが、そのあたりの変遷を確認しておきましょう。

 昭和61年3月までは基礎年金制度がなく、サラリーマンやOLは、旧法下の厚生年金だけに加
 入し、60歳から旧厚年の「老齢年金」を受給していました。
 ちなみに、旧国年の老齢年金は、65歳から支給されていました。
 ところが、昭和61年の法改正により、基礎年金制度が導入され、厚年も国年のように65歳から
 の支給に変えようということになったのです。
 財政難が理由です。
 少子高齢化が進み、年金給付の財源をまかなう現役世代が減少する一方、年金受給者だけが
 増えていく状況では、60歳支給は難しく、受給開始年齢を引き上げることになったのです。

 とはいえ、60歳から年金が入ることを前提にライフプラン(住宅ローン、子どもの教育費、生命
 保険など)を組んでいることが多く、いきなり5年も遅くなるというのは、国民生活に多大な影響
 が出るので、60歳から65歳までは特別な老齢厚生年金を支給するということにして、時間をか
 けて、徐々に65歳支給に移行する仕組みにしたのです。


 特別に支給する老齢厚生年金のことを「特別支給の老齢厚生年金」といい、定額部分と報酬比
 例部分でできています。
 一定の場合、これに加給年金額が加算されますが話を単純化するため省きます。

 

 「特別支給の老齢厚生年金」の中の報酬比例部分というのは、65歳からは老齢厚生年金にあた
 る部分ですが、文字通り、報酬(給与)の多い少ないによって支給額が変わってきます。
 報酬(給与)が多ければ保険料も多く払うから貰うのも多くなる。逆に、報酬(給与)が少なければ
 保険料も少ないので受給額も少なくなるということです。

 一方、定額部分は、65歳から受け取る老齢基礎年金にあたります。
 老齢基礎年金の年金額が保険料納付済期間と保険料免除期間の長さによって決るように、第2
 号被保険者も厚年の被保険者期間の長さによって年金額は決定されます。ただし、第2号被保
 険者期間で、年金額に反映するのは、20歳から60歳までの間に限られます。

 ■ 支給要件

 @ 60歳以上であること
 A 被保険者期間を1年以上有すること
 B 国民年金の老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていること

 @ 60歳以上というのは、変遷のところで見たように、昔、旧法時代(昭和61年3月以前)に、
   60歳から支給されていたことに由来します。新法(昭和61年4月以後)では、原則、65歳支
   給開始となりましたが、いきなり65歳に引上げるのは難しいので、60歳からの支給になって
   います。
 A では、あえて何もつけずに「被保険者期間」としてありますが、ここでの「被保険者期間」は、
   厚生年金の被保険者期間です。言い直すと、「厚生年金の被保険者期間が1年以上あるこ
   と」となります。
 B は、国年と厚年を一体のものとして捉えるということの好例ですね。国年と同じように期間短
   縮の特例があります。

 ■ 老齢厚生年金の額




 @ 報酬比例部分の額

 (1) 総報酬制導入前(平成15年3月31日以前)

 平成15年3月31日以前の被保険者期間の平均標準報酬月額 × 7.125/1,000(※1)
 × 平成15年3月31日以前の被保険者期間の月数


 (2) 総報酬制導入後(平成15年4月1日以後)


 平成15年4月1日以後の被保険者期間の平均標準報酬額 × 5.481/1,000(※2)
 × 平成15年4月1日以後の被保険者期間の月数

 
 ※ 被保険者期間が総報酬制導入前後にある場合は、(1)+(2)の額となります。

 ※1:昭和21年4月1日以前生まれの者については、生年月日に応じ、9.5/1,000〜7.23/1,000に
    読み替えます。
 ※2:昭和21年4月1日以前生まれの者については、生年月日に応じ、7.308/1,000〜5.562/1,000
    に読み替えます。
 
 物価スライド特例措置が取られる場合には、計算式が若干変わります。
 平均標準報酬月額とか平均標準報酬額というのは、会社からもらう毎月の給料や賞与の総額
 を被保険者期間の総月数で割ったものです。
 大卒初任給が1万円の時代と今の1万円では価値が違うので、再評価率なるものを用いて調
 整します。
 総報酬制導入前は「平均標準報酬月額」であり、導入後は「平均標準報酬額」となっているの
 は、賞与を含めるか否かがあるためです。賞与を含めないのが「月額」、含めるのが「額」です。


 A 定額部分の額


 1,626円 × 改定率(※) × 被保険者期間の月数



 ※:昭和21年4月1日以前生まれの者については、生年月日に応じ、改定率×1.875〜1.032に
   読み替えます。

 物価スライド特例措置がとられる場合は、計算式が変わります。
 また、被保険者期間の月数は、生年月日により上限があります。

 @、Aの他、老齢厚生年金の受給者(原則、被保険者期間の月数が240以上であるもの)で、
 一定の被扶養者がある場合は、その被扶養者分の生活保障として、以下の加給年金額が加
 算されます。


 配偶者 及び
 第1子・第2子

 1人につき 224,500円 (平成27年度から据え置き)

 第3子以降  1人につき  74,800円 (平成27年度から据え置き)

 厚生年金の保険給付 (障害厚生年金)

 ■ 障害厚生年金
 
 障害基礎年金と同じように、ケガや病気で重い障害を負ったときに支給される年金です。
 国民年金の障害基礎年金と重複するところが多いので、違いを意識して学習すると効率的です。

 ■ 支給要件

 @ 障害の原因となった傷病の初診日において被保険者であること
 A 障害認定日において、その傷病により障害等級1級、2級又は3級に該当する程度の障害の
   状態にあること
 B 初診日の前日において保険料納付要件を満たしていること

 障害基礎年金と異なり、「 初診日において、被保険者であった者であって、日本国内に住所を有
 し、かつ、60歳以上65歳未満であること 」というのがありません。
 これが何を意味しているのか?

 そう!初診日現在で被保険者であることが必要ということです。
 要するに、あくまで現役の被保険者に限られるということですね。
 なお、これは初診日の話であって、障害認定日は関係ないですよ。誤解の無いように!

 それと厚年では障害等級は3級まであります。
 障害認定日や保険料納付要件は、障害基礎年金と同じです。

 ■ 障害厚生年金の額

  障害等級に応じて次の金額となります。

 (1) 総報酬制導入前(平成15年3月31日以前)

 障害等級1級  平成15年3月31日以前の被保険者期間の平均標準報酬月額 ×
 7.125/1,000
(※1) × 平成15年3月31日以前の被保険者期間の
 月数
(※2) × 1.25 + 配偶者加給年金額
 障害等級2級  平成15年3月31日以前の被保険者期間の平均標準報酬月額 ×
 7.125/1,000
(※1) × 平成15年3月31日以前の被保険者期間の
 月数
(※2) + 配偶者加給年金額
 障害等級3級  平成15年3月31日以前の被保険者期間の平均標準報酬月額 ×
 7.125/1,000
(※1) × 平成15年3月31日以前の被保険者期間の
 月数
(※2)

 (2) 総報酬制導入後(平成15年4月1日以後)


 障害等級1級  平成15年4月1日以後の被保険者期間の平均標準報酬額 ×
 5.481/1,000
(※1) × 平成15年4月1日以後の被保険者期間の
 月数
(※2) × 1.25 + 配偶者加給年金額
 障害等級2級  平成15年4月1日以後の被保険者期間の平均標準報酬額 ×
 5.481/1,000
(※1) × 平成15年4月1日以後の被保険者期間の
 月数
(※2) + 配偶者加給年金額
 障害等級3級  平成15年4月1日以後の被保険者期間の平均標準報酬額 ×
 5.481/1,000
(※1) × 平成15年4月1日以後の被保険者期間の
 月数
(※2)

 ※ 被保険者期間が総報酬制導入前後にある場合は、(1)+(2)の額となります。

 ※1:給付乗率(7.125や5.481)は定率で、生年月日による読み替えはありません。
 ※2:被保険者期間の月数が300(25年)に満たないときは、300(25年)とします。
  ( 被保険者期間が総報酬制導入前後にある場合は、(1)+(2)の額に300を被保険者期間の
    月数で除して得た額を乗じた額とします。)
    ※「25年」は、法改正により平成29年4月から「10年」になる予定

 ※1や※2は、老齢厚生年金と違うところです。
 また、障害基礎年金には 「子の加算」 がありましたが、障害厚生年金にはありません。
 その代わりに1級と2級に配偶者加給年金額がつきます。

 厚生年金の保険給付 (遺族厚生年金)


 ■ 遺族厚生年金

 これまで見てきた老齢厚生年金や障害厚生年金は、支給要件を満たすと被保険者や被保険者
 だった人、本人が年金を受け取っていましたが、遺族厚生年金は、本人は死んでいるので残され
 た遺族が年金を受けることになります。
 そのため年金を遺族に残すために被保険者や被保険者だった人と、それを受け取ることができ
 る遺族の両方に要件があります。
 障害と同じように、国民年金の遺族基礎年金との違いを意識して学習すると効率的です。

 ■ 遺族厚生年金を残すことができる人(死亡した人)

 @ 厚生年金の被保険者
 A 被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であった間に初診日がある傷病により、その初診
   日から起算して5年を経過する日前に死亡した者
 B 障害等級1級又は2級の障害状態にある障害厚生年金の受給権者
 C 老齢厚生年金の受給権者又は老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている者

 ※ @、A、Bの場合を短期要件、Cの場合を長期要件といいます。
   老齢厚生年金の受給資格を満たしているかどうかの違いです。
 ※ @、Aは、保険料納付要件(遺族基礎年金と同じ)があります。

 ■ 遺族厚生年金を受け取ることができる人

 上で見た遺族厚生年金を残すことができる人の死亡当時、その死亡した人によって生計を維持
 していた
 @ 配偶者・子 A 父母 B孫 C祖父母 です。(@ABCは受給の優先順位)
 遺族基礎年金よりも受け取ることができる人の範囲が広くなっています。

 ■ 遺族基礎年金の額

 端的に言うと、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。
 短期要件と長期要件で計算式が異なります。
 
 (1) 総報酬制導入前(平成15年3月31日以前)


  短期要件  平成15年3月31日以前の被保険者期間の平均標準報酬月額 ×
 7.125/1,000
(※1) × 平成15年3月31日以前の被保険者期間の
 月数
(※2) × 3/4
 長期要件  平成15年3月31日以前の被保険者期間の平均標準報酬月額 ×
 7.125/1,000
(※3) × 平成15年3月31日以前の被保険者期間の
 月数
(※5) × 3/4

 (2) 総報酬制導入後(平成15年4月1日以後)


  短期要件  平成15年4月1日以後の被保険者期間の平均標準報酬額 ×
 5.481/1,000
(※1) × 平成15年4月1日以後の被保険者期間の
 月数
(※2) × 3/4
 長期要件  平成15年4月1日以後の被保険者期間の平均標準報酬額 ×
 5.481/1,000
(※4) × 平成15年4月1日以後の被保険者期間の
 月数
(※5) × 3/4

 ※ 被保険者期間が総報酬制導入前後にある場合は、(1)+(2)の額となります。

 ※1:短期要件の給付乗率(7.125や5.481)は定率で、生年月日による読み替えはありません。
 ※2:短期要件の被保険者期間の月数が300(25年)に満たないときは、300(25年)とします。

  ( 被保険者期間が総報酬制導入前後にある場合は、(1)+(2)の額に300を被保険者期間の
    月数で除して得た額を乗じた額とします。)
    ※「25年」は、法改正により平成29年4月から「10年」になる予定
 ※3:昭和21年4月1日以前生まれの者については、生年月日に応じ、9.5/1,000〜7.23/1,000に
    読み替えます。
 ※4:昭和21年4月1日以前生まれの者については、生年月日に応じ、7.308/1,000〜5.562/1,000
    に読み替えます。
 ※5:実際の被保険者期間を用います。