さて、【適年】は【平成14年に成立】した【確定給付企業年金法】によって既に廃止されています。しかし、経過措置として平成24年3月までは存続が認められています。よく適年はまだ廃止されておらず、平成24年に廃止されるという声を聞きますが、既に廃止されており、現在はその経過措置として存続中なのだということを覚えておいてください。
平成15年3月の時点で6万件あった適年契約は経過措置期間中に他の制度へ移行しなければなりません。
ここで適年とは一体何か?をカンタンに説明しておきます。
事業主が退職金制度を導入する場合は、就業規則の一部である退職金規程を作成し、労働組合がある場合はその労組、ない場合は労働者の過半数代表者の【意見書】を添付して労働基準監督署に届出なければなりません。
一般に退職金とは退職一時金、つまり定年退職金を指し、退職年金とは退職後に年金としてもらうことをいいます。
よって、仮に退職一時金と退職年金を支払う場合には、退職一時金について定める退職金規程と退職年金について定める退職年金規程を定める必要があるのです。
これも退職金の設計次第ですが(本試験ではここまで深く問われることはないと思いますが)、退職金の中に退職年金を含めてしまう内枠方式と退職金と退職年金を別立てで管理する外枠方式があります。
つまり、退職金を退職者に支払うには、退職金規程という就業規則に基づいて、その財源となる適年から支払うということになります。よく適年を解約したらそれでいいの?といわれる声を聞きますが、適年を解約しても財源を解約したというだけで、退職金規程や退職年金規程を変更しなければ何にもならないのです。
適年についてお分かり頂けたでしょうか?一口にテキネン!?といってもカタカナでしか頭に入ってきません。まず適年とは何ぞや?ということを頭にいれてから年金制度をみていくと効率的に頭に入ります。
そこで、次に適年の移行先ですが、従来移行先は【厚年基金】に限られていました。しかし、多くの中小企業の実態を考慮し、【確定給付企業年金】、【確定拠出年金】、【中退共】を追加することとなり、適年解約後の内部積立と生命保険会社の(代表的な商品では)養老保険と合わせて6通りの移行が可能となっています。
ちなみに適年解約後の内部積立とは、一言で言えば企業内に年金原資を積み立てておく貯金のことです。適年がひとつの財源である以上、その財源をどう運用するかがポイントとなります。内部積立で企業内で独自に積み立て、退職金規程・退職年金規程に従って退職者に支払うということになります。
それでは何故、適年は廃止されることになったのでしょうか。それはバブル時代に利率がよかったとき、【掛金が全額損金扱い】となることから中小企業がこぞって導入したのですが、その後、平成大不況となってからは予定利率を実際の利率が下回り、運用が悪くなって【過去勤務債務】がどんどん膨らんできたためです。そこでこのまま放置しておけないということになり、廃止ということになったのです。
適年というのは確定給付型ですので、約定した支給額とするために掛金が変動します。運用がどんどん悪くなった上、【退職給付会計の導入】により、【退職給付引当金】を計上しなければならず、運用悪化による【過去勤務債務】の増大で将来の退職金倒産が懸念されています。 |