厚生年金保険の実施機関

 厚生年金保険の実施機関には、@厚生労働大臣、A国家公務員共済組合及び国家公務員共済
 組合連合会、B地方公務員共済組合、全国市町村職員共済組合連合会及び地方公務員共済組
 合連合会、C日本私立学校振興・共済事業団があります。
 

 厚生年金保険の適用事業所

 強制適用事業所とは、次のいずれかに該当する事業所又は船舶で、法律により、事業主や従業
 員の意志に関係なく、厚生年金保険への加入が定められています。

 1.次の事業を行い、常時5人以上の従業員を使用する事業所(法6条)
   
   製造業、鉱業、電気ガス業、運送業、貨物積卸し業、物品販売業、金融保険業、 保管賃貸業、
   媒介斡旋業、集金案内広告業、清掃業、土木建築業、教育研究調査業、 医療事業、通信報
   道業、社会福祉事業、法務会計事業 (以上17業種、下記参照)

 2.常時従業員を使用する国・地方公共団体又は法人の事業所(法3条)


 3.船員法第1条に規定する船員として船舶所有者に使用される者が乗り組む船舶
 
 ■ 非強制適用の主な業種(上記17業種以外)

  
 ※なお、これらの業種であっても、法人となった場合は、上記2.に該当することになるので、
   強制適用事業所となる。
 

 厚生年金保険の被保険者

 ■
厚生年金被保険者の種別(法2条の5、法15条)

 @ 第1号厚生年金被保険者(A〜C以外の厚生年金保険の被保険者)
 A 第2号厚生年金被保険者(国家公務員共済組合の組合員たる厚生年金保険の被保険者)
 B 第3号厚生年金被保険者(地方公務員共済組合の組合員たる厚生年金保険の被保険者)
 C 第4号厚生年金被保険者(私立学校教職員共済法の規定による私立学校教職員共済制度
   の加入者たる厚生年金保険の被保険者)


 ■
強制加入の被保険者(当然被保険者) (法9条)

 適用事業所に使用される70歳未満の者です。
 対象となる範囲や被保険者資格が得られる時期などについては、健康保険の被保険者と同じで
 すが、厚生年金保険では、加入年齢が70歳未満の者に限られています。
 被保険者について事業主の行う各種届出、被保険者資格の取得手続きなどは、健康保険と厚生
 年金保険とは1つの書類で共通に行われます。

 ■
任意加入の被保険者

 任意加入の被保険者には、任意単独被保険者、高齢任意加入被保険者及び任意継続被保険
 者(第4種被保険者)があります。

 1.任意単独被保険者(法10条)

   任意単独被保険者は、厚生年金保険の適用事業所以外の事業所に勤務している70歳未満
   の者が厚生年金保険から老齢給付を多く受けるためや、そもそも老齢給付を受けるのに必要
   な期間を満たすために、事業主の同意と厚生労働大臣の認可を受けて単独で厚生年金保険
   に任意加入する者のことです。

   後の高齢任意加入被保険者で解説していますが、もともと厚生年金保険に加入していない事
   業所なので事業主の同意と厚生労働大臣の認可というハードルを設けています。
   なお、事業主は保険料の半額負担と納付義務を負います。

   ※適用事業所以外の事業所というのは、厚生年金の非適用事業所のことです。

 2.高齢任意加入被保険者(法附則4の3)

   高齢任意加入被保険者とは、事業所に勤務している70歳以上の高齢者で、厚生年金保険や
   国民年金などから老齢給付を受けることができない者が、給付を受けることができる期間を満
   たすまで加入する者をいいます。
   適用事業所か適用事業所以外の事業所かで資格要件や保険料負担と納付義務が異なります。
   (下記参照)
 
 ■ 適用事業所と適用事業所以外の事業所における高齢任意加入被保険者の資格要件及び
   保険料負担と納付義務


   

   適用事業所と適用事業所以外の事業所で異なっているのは、厚生年金保険は、健康保険と
   同じように、被保険者のことよりも、その事業所の適用関係を先に考えるからです。

   平たく言うと、適用事業所以外の事業所で、高齢任意加入被保険者を認めるということは、
   事業所として厚生年金に入っていないにも関わらず、その人だけ特別扱いしているわけです。

   いくら高齢で老齢の年金受給資格がないからといって、事業所単位で加入すべきものを特例
   的にその人だけが加入できるようにするのだから、事業主としての負担(保険料折半と納付義
   務のこと)は当然わかった上のことと厚年法は考えているのです。

   ちなみに、資格取得の要件が、「申出」ではなく「認可」と一段重いものになっていますが、これ
   は行政からすれば、適用事業所というのは、高齢任意加入被保険者がいようがいまいが、
   前から厚年に加入しているので既知の事業所であるのに対し、適用事業所以外の事業所の
   場合は、高齢任意加入被保険者が出現したことによって、初めて厚年の手続きを行うわけで
   よく知らない事業所なわけです。
   だから、適用事業所なら「申出」でOKのところ、「認可」としています。
 

 過去問
平成28年 択一 問1E(改題)
 常時5人の従業員を使用する、個人経営の学習塾を適用事業所とするためには任意適用事業
 所の認可を受けなければならない。
 
 (答え) ×
 学習塾は、教育、研究又は調査の事業にあたり適用業種である。また個人経営で常時5人の
 従業員を使用する場合は、強制適用事業所である。したがって、設問にある学習塾は任意適
 用事業所の認可を受ける、受けないに関係なく適用事業所となる。
 
平成25年 択一 問5A
 厚生年金保険法第6条第3項に定める任意適用事業所となる認可を受けようとするときは、
 当該事業所の事業主は、当該事業所に使用される者(同法第12条の規定により適用除外と
 なる者を除く。以下同じ。)の3分の2以上の同意を得て、厚生労働大臣に申請しなければなら
 ない。
 
 (答え) × 
 「3分の2以上の同意」ではなく「2分の1以上の同意」を得て申請する必要がある。
 
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