被保険者資格の取得と喪失

 被保険者資格の取得日とは被保険者となる日であり、喪失日とは被保険者でなくなる日のこと
 です。
 

 条文
被保険者資格取得の時期 (第8条)
 

 
国民年金法第7条の規定による被保険者は、同条第1項第2号及び第3号のいずれに
 も該当しない者については第1号から第3号までのいずれかに該当するに至った日に、
 20歳未満の者又は60歳以上の者については第4号に該当するに至った日に、その他
 の者については同号又は第5号のいずれかに該当するに至った日に、それぞれ被保険
 者の資格を取得する。

 @ 20歳に達したとき
 A 日本国内に住所を有するに至ったとき。
 B 厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることができる者でなくなったとき
 C 厚生年金保険法の被保険者の資格を取得したとき
 D 被扶養配偶者となったとき

 
 ■ 第1号被保険者の資格取得時期

  @ 20歳に達した日
  A 日本国内に住所を有した日
  B 被用者年金制度の老齢・退職年金の受給権者でなくなった日
  「@ 20歳に達した日」とは、具体的には誕生日の前日です。
  4月1日が誕生日なら3月31日です。なぜそうなるかは、ちょっとどころかかなり深煎り(入り)
  してしまうのですが、せっかくの機会なのでざっと見ておきましょう。

  年齢というのは、「出生の日より起算し、起算日(出生日)に応答する日の前日をもって満了し、
  年齢を加算する」と「年齢計算に関する法律」という法律で決められています。
  要は、生まれた時刻に関係なく、生まれた日を第1日目として、誕生日の前日深夜12時を以
  て年齢を1つ加算するわけです。
  だから、新たな制度や経過措置など4月1日から実施しようとすると、対象となる生年月日は、
  4月2日〜翌4月1日となるのです。老齢基礎年金の受給資格期間の短縮特例で出てくるの
  はその典型ですね。
  また、受給権の発生は月を単位としているので、1日生まれの場合は当月分から受給権が発
  生するのに2日以降生まれは翌月分から発生するのもそうです。
 
 
 ( 参考 )
 年齢計算に関する法律
  @ 年齢は出生の日よりこれを起算す
  A 民法第143条の規定は年齢の計算にこれを準用す

 
暦による計算(民法 第143条)
  @ 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
  A 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年に
    おいてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定
    めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
  次に住所ですが、「A 日本国内に住所を有した日」なんていうのが出てくるのは、海外で生活
  していた人が日本に定住するような場合があるからです。
  何をもって住所とするかはなかなか難しいのですが、日本の民法は、その人の実質的な生活
  場所を住所と考えています。
 ( 参考 )
 住所(民法 第22条)
  各人の生活の本拠をその者の住所とする。

 ■ 第2号被保険者の資格取得時期

  @ 厚生年金保険の被保険者の資格を取得した日

 ■ 第3号被保険者の資格取得時期

  @ 20歳以上60歳未満の間に第2号被保険者の被扶養配偶者となった日
  A 第2号被保険者の被扶養配偶者が20歳に達した日

  Aは、20歳未満でサラリーマンと結婚し、扶養されていた妻が20歳になったようなケースです。
 
被保険者資格喪失の時期 (第9条)
 

 
国民年金法第7条の規定による被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至った
 日の翌日(第2号に該当するに至った日に更に第7条第1項第2号(第2号被保険者)
 若しくは第3号(第3号被保険者)に該当するに至ったとき又は第3号から第5号までの
 いずれかに該当するに至ったときは、その日)に、被保険者の資格を喪失する。

 @ 死亡したとき
 A 日本国内に住所を有しなくなったとき(第7条第1項第2号(第2号被保険者)又は第
   3号(第3号被保険者)に該当するときを除く)
 B 60歳に達したとき(第7条第1項第2号(第2号被保険者)に該当するときを除く)
 C 厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることができる者となったとき(第7条第
   1項第2号(第2号被保険者)又は第3号(第3号被保険者)に該当するときを除く)
 D 厚生年金保険法の被保険者の資格を喪失したとき(第7条第1項各号(第1号被保
   険者、第2号被保険者、第3号被保険者)のいずれかに該当するときを除く)
 E 被扶養配偶者でなくなったとき(第7条第1項第1号(第1号被保険者)又は第2号
   (第2号被保険者)に該当するときを除く)
 F 65歳に達したとき(老齢又は退職を支給事由とする給付の受給権を有しない者を
   除く)

 
 ■ 第1号被保険者の資格喪失時期

  @ 死亡日の翌日
  A 日本国内に住所を有しなくなった日の翌日
    (第2号被保険者、第3号被保険者に該当するときは喪失しない)
  B 60歳に達した日
    (第2号被保険者に該当するときは喪失しない)
  C 厚生年金保険法に基づく老齢給付等の受給権者となった日
    (第2号被保険者又は第3号被保険者に該当するときは喪失しない)
  D 国民年金法の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者と
    なった日の翌日
 
  死亡日当日、日本出国当日は被保険者ということですね。
  60歳に達した日は、さっきも見たように誕生日前日です。
  また、厚生年金保険法に基づく老齢給付等の受給権者となった場合でも第2号被保険者に
  該当するときは喪失しないというなら、1号に該当するときはどうなるのか?といった疑問が
  出てくるかもしれません。
  定義をよ〜く思い出してください。そう! 第1号被保険者は被用者年金各法に基づく老齢
  給付等を受けることができる者を除くとされているので当然資格喪失します。
 ■ 第2号被保険者の資格喪失時期

  @ 厚生年金保険の被保険者の資格を喪失した日
    (第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者のいずれかに該当するときは喪失し
    ない)
    ※資格喪失日=退職日 ではありません。資格喪失は退職日の翌日です。

  A 65歳に達した日(老齢給付等の受給権を有しないときは喪失しない)
  B 死亡した日の翌日
 
 ■ 第3号被保険者の資格喪失時期

  @ 死亡日の翌日
  A 60歳に達した日
  B 被扶養配偶者でなくなった日の翌日
    (第1号被保険者又は第2号被保険者に該当するときは喪失しない)


 任意加入被保険者(65歳未満の者)の資格取得日と資格喪失日

 任意加入被保険者(65歳未満の者)の資格取得日と資格喪失日(法附則5条2項他)

 

 ■ 資格取得時期

 ( A・B・C共通 )
  任意加入の申出をした日

 ■ 資格喪失時期

 ( A・B・C共通 )
 @ 死亡日の翌日
 A 65歳に達した日
 B 第2号被保険者の資格を取得した日
 C 資格喪失の申し出が受理された日
 D 満額の老齢基礎年金が受給できる月数(原則480月)に達した月の翌月1日

 ※ D
は、受給権の発生、消滅、支給停止、差し止め、被保険者期間は月を単位としているから
   こういう表現になります。

 (A・B共通)
 国民年金法の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者となった
 日の翌日


 ( Aのみ )
 @ 日本国内に住所を有しなくなった日の翌日
 A 厚生年金保険法に基づく老齢給付等の受給権者でなくなった日
 B 第2号被保険者の被扶養配偶者となった日
 C 保険料を滞納し督促状に指定した日までに納付しないときはその指定した日の翌日

 ※ Cですが、任意加入なので滞納は喪失事由になります。

 ( Bのみ )
 @ 日本国内に住所を有しなくなった日の翌日
 A 保険料を滞納し督促状に指定した日までに納付しないときはその指定した日の翌日

 ( Cのみ )
 @ 日本国内に住所を有した日の翌日
 A 日本国籍を有しなくなった日の翌日
 B 60歳未満で第2号被保険者の被扶養配偶者となった日の翌日(実質は当日)
 C 保険料を滞納し、保険料を納付することなく2年間が経過した日の翌日

 ※ @〜Cの事実があった日に更に被保険者の資格を取得したときは、その日に資格を喪失する
 ※ A
は、海外居住の外国人になるということなので、当然といえば当然ですね。でないと世界中
   の外国人が日本の年金に加入できることになってしまいます。
 ※ Cで、2年間となっているのは、第1号被保険者の保険料未納の時効が2年となっていることの
   バランスを考えてでしょう。ちなみに、国内居住と違って督促はしません。


 特例任意加入被保険者(65歳以上70歳未満の者)の資格取得日と資格喪失日

 特例任意加入被保険者(65歳以上70歳未満の者)の資格取得日と資格喪失日(平成6年改正法
 附則11条、平成16年改正法附則23条)

 

 ■ 資格取得時期

 ( 特例A・特例B共通 )
  任意加入の申出をした日

 ■ 資格喪失時期

 ( 特例A・特例B共通 )
 @ 死亡日の翌日
 A 第2号被保険者の資格を取得した日
 B 老齢基礎年金や厚生年金保険法に基づく老齢給付等の受給権者となった日の翌日
 C 70歳に達した日
 D 資格喪失の申し出が受理された日

 ( 特例Aのみ )
 @ 日本国内に住所を有しなくなった日の翌日
 A 保険料を滞納し督促状に指定した日までに納付しないときはその指定した日の翌日
 B適用除外すべき特別の理由がある者となった日の翌日

 ( 特例Bのみ )
 @ 日本国内に住所を有した日の翌日
 A 日本国籍を有しなくなった日の翌日
 B 保険料を滞納し、保険料を納付することなく2年間が経過した日の翌日

 ※ @〜Bの事実があった日に更に被保険者の資格を取得したときは、その日に資格喪失する


 過去問
平成27年 択一 問1E
 厚生年金保険の在職老齢年金を受給する65歳以上70歳未満の被保険者の収入によって生
 計を維持する20歳以上60歳未満の配偶者は、第3号被保険者とはならない。
 
 (答え) ○
 その通り。設問の在職老齢年金の受給者は、厚生年金保険の被保険者であるが、第2号被保
 険者ではない。したがって、設問の配偶者は、第2号被保険者の被扶養配偶者ではないため
 第3号被保険者にならない。
 
平成27年 択一 問1C
 海外に居住する20歳以上65歳未満の日本国籍を有する任意加入被保険者は、保険料を
 滞納し、その後、保険料を納付することなく1年間が経過した日の翌日に、被保険者資格を
 喪失する。
 
 (答え) ×
 「2年間が経過した日の翌日」に喪失する。
 
平成28年 択一 問6C
 第1号厚生年金被保険者である者が同時に第4号厚生年金被保険者の資格を有することとなっ
 た場合、2以上事業所選択届を、選択する年金事務所又は日本私立学校振興・共済事業団に
 届け出なければならない。
 
 (答え) ×
 第1号厚生年金被保険者が同時に第2号厚生年金被保険者、第3号厚生年金被保険者又は
 第4号厚生年金被保険者の資格を有するに至ったときは、その日に、当該第1号厚生年金被
 保険者の資格を喪失することになるので、設問の届け出は不要である。
 
平成25年 択一 問1ウ
 船舶所有者に臨時に使用される船員であって、その者が引き続き1か月未満の期間日々雇い
 入れられる場合、厚生年金保険の被保険者とならない。
 
 (答え) ×
 臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であって、次に掲げるものは適用
 除外とされる。
 (イ)日々雇い入れられる者
 (ロ)2月以内の期間を定めて使用される者
 ただし、(イ)に掲げる者にあっては1月を超え、(ロ)に掲げる者にあっては所定の期間を超え、
 引き続き使用されるに至った場合は除かれる。よって、臨時に使用される者で、船舶所有者に
 使用される船員は被保険者となる。
 
平成27年 択一 問2A
 任意単独被保険者が厚生労働大臣の認可を受けてその資格を喪失するには、事業主の同意を
 得た上で、所定の事項を記載した申請書を提出しなければならない。
 
 (答え) ×
 任意単独被保険者は、厚生労働大臣の認可を受けて、被保険者の資格を喪失するので、事業
 主の同意は不要である。
 
平成25年 択一 問1イ
 適用事業所以外の事業所に使用される70歳以上の者であって、老齢厚生年金、老齢基礎年金
 その他の老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付であって政令で定める給付の受給権を
 有しないものが、当該事業所の事業主の同意を得て厚生労働大臣の認可を受けた場合、厚生
 年金保険の被保険者とならない。
 
 (答え) ×
 「被保険者とならない」ではなく、「高齢任意加入被保険者となる」である。
 
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