給付の通則(裁定)

裁定(第16条)
 

 
給付を受ける権利は、その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基いて、
 厚生労働大臣が裁定する。

 

 ■ 裁定と基本権

 @ 年金を受ける権利(受給権)は、年齢や受給資格期間などの要件が整ったときに事実上発生
   するのであるが、要件を満たしていることの確認を受ける必要がある。
   この受給権があるかどうかの確認を行うことを「裁定」というが、年金を受ける要件を満たした
   者は、厚生労働大臣に裁定の請求を行うことになる。
 A 裁定請求があると、年金事務所では年齢や加入期間などの要件が整っているか確認し、整っ
   ていれば、受給権があることを証する「年金証書」と確認したこと内容を示す「年金裁定通知
   知書」を送付する。この年金を受ける権利(受給権)のことを「基本権」という。


 給付の通則(端数処理)

端数処理(第17条第1項)
 

 年金たる給付(以下「年金給付」という。)を受ける権利を裁定する場合又は年金給付
 の額を改定する場合において、年金給付の額に50銭未満の端数が生じたときは、
 これを切り捨て、50銭以上1円未満の端数が生じたときは、これを1円に切り上げる
 ものとする。

 

 給付の通則(年金の支給期間及び支払期月)

年金の支給期間及び支払期月(第18条)
 

 1 年金給付の支給は、これを支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始め、
   権利が消滅した日の属する月で終るものとする。

 2 年金給付は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、その事由が生じた日の属
   する月の翌月からその事由が消滅した日の属する月までの分の支給を停止する。
   ただし、これらの日が同じ月に属する場合は、支給を停止しない。

 3 年金給付は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、それぞれの前
   月までの分を支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであった年金又は権利が消
   滅した場合若しくは年金の支給を停止した場合におけるその期の年金は、その支払
   期月でない月であっても、支払うものとする。


 

 ■ 支分権

 受給権(基本権)に基づいて、実際に支払いを受ける権利のこと

 ■ 各支払期月の支払額に生じる端数処理

 各支払期月の支払額に1円未満の端数が生じたときは、「国等の債権債務等の金額の端数処理
 に関する法律(昭和25年法律第61号)」の規定により切り捨てられる。

 ■ 受給権発生日

 ○ 老齢基礎年金、付加年金

   ・ 65歳に達した日(誕生日の前日)
   ・ 65歳以降に受給資格要件を満たしたときは、受給資格要件を満たした日
   ・ 繰上げ支給の請求をした日

 ○ 障害基礎年金

   ・ 障害認定日
   ・ 事後重症請求をした場合は、請求をした日
   ・ 初診日が20歳前の場合は20歳に達した日(20歳の誕生日の前日)

 ○ 遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金

   ・ 死亡した日(死亡の推定及び失踪宣告の場合を含む)

 
■ 受給権消滅日(失権する日)

 ○ 老齢基礎年金、付加年金

   ・ 死亡した日

 ○ 障害基礎年金

   ・ 死亡した日
   ・ 厚生年金保険法に規定する3級の障害の状態にないまま65歳に達した日(65歳に達した日
    に3級の障害の状態でなくなってから3年が経過していないときは、3年を経過した日)
   ・ 新たな障害基礎年金の受給権が発生した日

 ○ 遺族基礎年金

  (配偶者と子に共通)
   ・ 死亡した日
   ・ 婚姻した日
   ・ 養子となった日(直系血族・姻族の養子となったときは除く)

  (配偶者が受給していた場合)
   すべての子が次のいずれかに該当した日
   ・ 死亡した日
   ・ 婚姻した日(事実婚(内縁関係)を含む)
   ・ 配偶者以外の者の養子となった日
   ・ 離縁により死亡した父の子でなくなった日
   ・ 配偶者と生計を同じくしなくなった日
   ・ 18歳到達年度の末日
    (障害基礎年金を受給できる障害の程度の状態にある子の場合は20歳に達した日)
   ・ 障害基礎年金を受給できる障害の程度の状態にある子が18歳到達年度の末日終了後、
    障害基礎年金を受給できる障害の程度の状態でなくなった日

  (子が受給していた場合)
   次のいずれかに該当した日
   ・ 18歳到達年度の末日
    (障害基礎年金を受給できる障害の程度の状態にある子の場合は20歳に達した日)
   ・ 障害基礎年金を受給できる障害の程度の状態にある子が18歳到達年度の末日終了後、
    障害基礎年金を受給できる障害の程度の状態でなくなった日

 ○ 寡婦年金
   ・ 死亡した日
   ・ 65歳に達した日
   ・ 婚姻した日
   ・ 養子となった日(直系血族・姻族の養子となったときは除く)


 給付の通則(給付制限)

 支給しない(第69条、71条第1項)
 

 ・ 
故意に障害又はその直接の原因となった事故を生じさせた者の当該障害について
   は、これを支給事由とする障害基礎年金は、支給しない。

 ・ 遺族基礎年金、寡婦年金又は死亡一時金は、被保険者又は被保険者であった者を
   故意に死亡させた者には、支給しない。

 ・ 被保険者又は被保険者であった者の死亡前に、その者の死亡によって遺族基礎年
   金又は死亡一時金の受給権者となるべき者を故意に死亡させた者についても、
   同様とする。

給付の全部又は一部を行わないことができる(第70条)

 ・ 
故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する
   指示に従わないことにより、障害若しくはその原因となった事故を生じさせ、又は障
   害の程度を増進させた者の当該障害については、これを支給事由とする給付は、
   その全部又は一部を行わないことができる。

 ・ 自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に
   関する指示に従わないことにより、死亡又はその原因となった事故を生じさせた者
   の死亡についても、同様とする。

 消滅する(第71条第2項)
 

 ・ 遺族基礎年金の受給権は、受給権者が他の受給権者を故意に死亡させたときは、
   消滅する。


  支給停止することができる(法72条)
 

 ・ 
年金給付は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、その額の全部又は
   一部につき、その支給を停止することができる。

  @ 受給権者が、正当な理由がなくて、第107条第1項の規定による命令に従わず、
    又は同項の規定による当該職員の質問に応じなかったとき。

  A 障害基礎年金の受給権者又は第107条第2項に規定する子が、正当な理由がな
    くて、同項の規定による命令に従わず、又は同項の規定による当該職員の診断を
    拒んだとき。

  一時差し止めることができる(法73条)
 

 ・ 
受給権者が、正当な理由がなくて、第105条第3項の規定による届出をせず、又は
   書類その他の物件を提出しないときは、年金給付の支払を一時差し止めることが
   できる。

   

 ■ 受給権者に関する調査(第107条)

 1 厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、受給権者に対して、その者の身分関係、障害
   の状態その他受給権の消滅、年金額の改定若しくは支給の停止に係る事項に関する書類
   その他の物件を提出すべきことを命じ、又は当該職員をしてこれらの事項に関し受給権者に
   質問させることができる。

  2 厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、障害基礎年金の受給権者若しくは障害等級
    に該当する障害の状態にあることによりその額が加算されている子又は障害等級に該当す
    る障害の状態にあることにより遺族基礎年金の受給権を有し、若しくは遺族基礎年金が支
    給され、若しくはその額が加算されている子に対して、その指定する医師若しくは歯科医師
    の診断を受けるべきことを命じ、又は当該職員をしてこれらの者の障害の状態を診断させる
    ことができる。

 ■ 国民年金受給権者現況届の未提出による支払の一時差し止め

 基礎年金の受給権者は、国民年金受給権者現況届を誕生月の末日までに届出することとなっ
 ているが、提出しないときは年金の支払いが一時差し止められる。
 差し止め期間中に届出が行われたときは、差し止められた期間について、後日支払われる。

 ■ 老齢基礎年金等受給権者にかかる住民基本台帳(住基ネットワーク)による生存確認

 
受給権者の生存確認については、住民基本台帳ネットワークにより確認を行うことになったので、
 現況届の未提出による支払の一時差し止めという制限はなくなった。
 (厚生労働省令第166号 平成18年9月22日)

 生存確認以外の確認(障害の程度確認(診断書)、所得確認(所得証明等))については、引続き
 現況届を提出する必要がある。


 給付の通則(時効)

時効(第102条)
 

 
1 年金給付を受ける権利(当該権利に基づき支払期月ごとに又は一時金として支払う
   ものとされる給付の支給を受ける権利を含む。)は、その支給事由が生じた日から
   5年を経過したときは、時効によって、消滅する。

 2 前項の時効は、当該年金給付がその全額につき支給を停止されている間は、進行
   しない。

 3 (省略)

 4 保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利
   及び死亡一時金を受ける権利は、2年を経過したときは、時効によって消滅する。

 

 ■ 時効の弾力的な運用

 年金給付を受けられる事実が発生してから5年の間に裁定請求を行わないと、時効により年金給
 付を受ける権利は消滅するのであるが、現行法令の容認する限度においてできる限り弾力的な
 運用を図っており、年金給付を受ける権利(基本権)の消滅自体の時効は採用していないため、
 実際には、年金の請求が5年を経過した後であっても、権利を確認できる書類がそろっていれば
 裁定請求することができる。(昭和42年4月5日 庁文発第3665号通知)

 ただし、年金の支払いを受ける権利(支分権)については、会計法の規定により5年間を経過した
 ときは時効により消滅するため、裁定請求を受付したときから5年しか遡らない。

 要するに、受給権(基本権)が発生して8年後に、裁定請求したケースだと、年金の支払いを受け
 る権利(支分権)のうち5年を経過してしまった3年分が消滅するということである(時効にかかって
 いない直近の5年分は受給できる)。
 もし弾力的に運用していなければ、受給権(基本権)そのものが消滅してしまい、裁定請求までの
 8年どころか、これから支給されるものも消滅してしまうのである。

 ■ 年金時効特例法

 
過去の公的年金制度の加入期間が見つかり国民年金原簿(年金記録)の訂正が行われた次の
 ような者は会計法の規定よる年金の支払いを受ける権利(支分権)の消滅時効(年金給付 5年、
 一時金 2年)は適用されず、受給権発生月の翌月までの全期間について、遡って年金給付やそ
 の差額の支払いを受けることができる。

 A 年金の支給を受けている者で年金記録の訂正により年金が増額改定された者
 B 年金記録の訂正により受給資格が確認され受給権が発生したが、消滅時効により直近の5年
   分の年金に限って支給を受けた者

 
なお、該当者が既に死亡しているときなどには、その遺族に年金給付やその差額が支払われる。
 また、この特例法の施行日後に該当者した者及びその遺族にも年金給付やその差額が支払わ
 れる。

 【
年金時効特例法制定の趣旨 】
 支払期月ごとに年金の支払いを受ける権利については、会計法の規定により、国は時効の利益
 を放棄できず、その権利の発生から5年を経過したときに自動的に(時効により支分権は消滅した
 との主張の有無を問わず)時効消滅することとされているため、従来、年金記録の訂正により年
 金額が増額しても、そのうち5年より前の支払分については、支給を受けることができなかった。
 平成19年の通常国会において「年金記録問題」が議論され、年金記録訂正に伴う年金の増額分
 が自動的に時効消滅する不利益を解消し、年金記録の管理に対する国民の信頼を確保するた
 め立法措置が講じられたのである。


 過去問
平成20年 択一 問7C
 国民年金は社会保険の一種であり、加入に際しては加入するかしないかの選択は認められてお
 らず、年金給付を受ける権利が発生したときにも受給するかしないかを選択することはできない。
 
 (答え) × 
 年金給付は受給権者の請求により裁定されるので、請求しないあるいは申出による支給停止を
 行うことは可能である。したがって、「年金給付を受ける権利が発生したときにも受給するかしな
 いかを選択することはできない。」のところが誤り。
 
平成11年 (社一)択一 問7D
 年金給付の支給は、これを支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始め、権利が消
 滅した日の属する月で終わる。
 
 (答え) ○ 
 
平成20年 択一 問8B
 障害基礎年金の受給権者が63歳の時点で、厚生年金保険法に規定する障害等級に該当する
 程度の障害の状態に該当しなくなった日から起算して3年を経過していたときは、その時点で当
 該障害基礎年金の受給権が消滅する。
 
 (答え) × 
 失権は、3級非該当のまま65歳に到達したか、3級非該当のまま3年経過したか。どちらか遅い方
 である。したがって、本問の場合には、65歳に達するまでは、障害基礎年金の受給権は消滅しな
 いことになる。
 
平成20年 択一 問10E
 遺族基礎年金の失権事由のうち配偶者と子に共通するものは、受給権者が、死亡したとき、婚姻
 をしたとき、及び直系血族又は直系姻族以外の養子になったときである。
 
 (答え) ○ 
 
平成20年 択一 問2D
 夫の死亡の当時に60歳未満であった妻に支給される寡婦年金は、妻が60歳に達した日の属す
 る月の翌月から支給が開始され、65歳に達した日の属する月まで支給される。
 
 (答え) ○
 なお、妻が、夫の死亡当時60歳以上であったときには、夫の死亡した日の属する月の翌月から
 支給される。
 
平成20年 択一 問8C
 故意に障害を生じさせた者の当該障害については、これを支給事由とする障害基礎年金の全部
 又は一部を支給しないことができる。
 
 (答え) × 

 「全部又は一部を支給しないことができる。」ではなく、「支給しない。」が正しい。

 
平成15年 (社一)択一 問9E
 国民年金の被保険者又は被保険者であった者を故意に死亡させた者には、その死亡を支給事
 由とする遺族基礎年金、寡婦年金又は死亡一時金を支給しない。
 
 (答え) ○  
 
平成13年 択一 問4A
 遺族基礎年金の受給権は、受給権者が他の受給権者を故意又は過失によって死亡させたとき
 は、消滅する。
 
 (答え) ×  
 遺族基礎年金の受給権は、受給権者が他の受給権者を「故意」に死亡させたときは消滅するが、
 「過失」により死亡させたときは「消滅しない」。
 
平成18年 択一 問2B
 給付を受ける権利は、その支給事由が生じた日から5年を経過したときは時効によって消滅する。
 
 (答え) × 
 年金給付を受ける権利の時効は、5年であるが、死亡一時金は2年である。本問は、「給付を受け
 る権利」となっているので死亡一時金も含まれることになり、誤りである。